私たちの先入観は打ち砕かれる。あらゆる面で人間を凌駕する、目も眩むような生物たちの生殖の事実…ようこそ、生物と性の世界へ。
40億年前から始まった、途切れることなく続く生物の生存競争は、生殖のための無数の戦略物語を生みだした。
本書では、陸・海・空からワニやダチョウ、カメレオン、ウミウシなど32種類の生物を選びだし、想像を超えた形状のオスの生殖器を繊細な鉛筆画で、交尾の様子をドラマチックで美しい色彩の水彩画で表す。それらを挿絵に、各生物の生殖にまつわる驚愕の仕掛けや策略を、動物学者のエマニュエル・プイドバによるユーモア溢れるエッセイで解説。
生物たちの生殖達成への飽くなき情熱によって、生殖器を自在に最適化させていくというその戦略は、今もとどまることなく地球上で練り続けられ、その結果として、私たちの地球は多種多様な生命に満ちた星であり続けている。人間を遥かに凌駕する生物たちの、知られざる最適化戦略の神秘と不思議をエッセイとビジュアルで綴る、注目の一書!
<目次>
はじめに
Ⅰ 形と大きさの計り知れない多様性:イリエワニ ― 溝がついたペニス/ダチョウ ― 鳥類全体の3%に入る珍しい鳥/ヨーロッパクサリヘビ ― ペニスがふたつある!/コノハカメレオン ― 小さいけど装備は万全!/ハリモグラ ― 4つの先端部をもつペニス!/オカヤドカリ ― 家あればこそ(ペニスが長くなった)!
Ⅱ できるだけ近づいてメスの生殖器を探りあてる。:マレーバク ― 自在に動くペニス!/アフリカゾウ ― 第二の鼻/アオイガイ ― ペニスを取り外す!/マガモ ― らせん状の荒ぶるペニス/マダラコウラナメクジ ― 交尾後のペニスが犠牲を強いられる!
Ⅲ ナンパを邪魔する。:ジョロウグモ ― オスが究極の犠牲を払う/オスミツバチ ― 女王バチに栓をする/チリメンウミウシ ― 戦うペニス!/イトトンボ ― ライバルの精子を追い出す!/ナナフシ ― メスを独占して快感を引き延ばす!
Ⅳ 受精を最適化するためにしがみつく、貫く。:セイウチ ― 世界最長の陰茎骨!/ファロステサス・クーロン ― 下顎のようなペニス!/ヨツモンマメゾウムシ ― トゲだらけのペニス!/ロンドコビトガラゴ ― トゲをもった「V」字型のペニス!/トコジラミ ― メスにペニスを突き刺す!/トリカヘチャタテ ― メスが反撃する!
Ⅴ コミュニケーションする。脅す、呼び寄せる、だます!:ケヅメリクガメ ― 巨大なペニスで脅す!/チビミズムシ ― ペニスで歌う!/シュントナルカ・イリアスティス ― ペニスが欺く!/フォッサ ― トゲのあるクリトリスで威嚇する!
Ⅵ 快感を味わう! 生殖なき奔放な性:ケープアラゲジリス ― マスターベーションが役に立つ/コバナフルーツコウモリ ― フェラチオとクンニリングス/バンドウイルカ ― 同性愛を生きるオス/ボノボ ― タブーなき解放された性/カクレクマノミ ― 性別と体の大きさを変える!/ドブネズミ ― 「超音波」のオーガズム
終わりに
謝辞
著:エマニュエル・プイドバ/イラストレーション:ジュリー・テラゾーニ/訳:西岡恒男
◆エマニュエル・プイドバ
フランス国立科学研究センターおよび国立自然史博物館の研究主任。動物の行動生態・進化を専門分野として研究しており、サル、ゾウ、肉食動物、鳥類、節足動物といった生物を対象とした学際的なプロジェクトを数多く組織している。フランス国立科学研究センター銀賞など受賞多数。
著作『Atlas de zoologie poétique(図解 詩的生物学)』(アルトー社刊、2018、未邦訳)、『鳥頭なんて誰が言った? :動物の「知能」にかんする大いなる誤解』(早川書房、2019)をはじめ、数々のエッセイが大きな反響を呼んでいる。
◆ジュリー・テラゾーニ
イラストレーター兼美術教員。伝統的な技法や自然への関心から植物学や動物学に造詣が深く、対象への独特のヴィジョンを、伝統的な技法やクラシックな表現と融合させた作品を得意とする。
エマニュエル・プイドバの著作『図解 詩的生物学』にもイラストを提供。
B5判変型 並製本 184頁(図版86点)