現代アーティスト小松美羽にしか描けない祈りの世界。
1984年、長野県に生まれた現代アーティスト小松美羽は、豊かな自然の中で生き物の生と死を身近に感じた経験から、独自の死生観を形作ってきた。神々の使いや神獣、人々の祈りといった「見えない何か」からインスピレーションを得たモチーフを描くようになる。
「アートは魂を癒す薬である」と考える小松美羽にとって、作品制作は祈りと共にあり、「神事」。このような制作スタイルの小松美羽は、他に類を見ない唯一無二のアーティストと言える。
本書は、これまでの画業を振り返る初の本格的な展覧会となった「小松美羽展 岡本太郎に挑む―霊性とマンダラ」(川崎市岡本太郎美術館、2022年6月25日~8月28日)の展覧会図録を書籍化したもので、小松美羽の初期作品の銅版画をはじめ、ニューヨーク滞在を経て表現が飛躍した発展期の作品、そして開催年の2022年に制作された作品で構成。さらに展覧会の展示風景も収録し、作品のスケールや臨場感にも触れることができる。
この展覧会で限定公開された、真言宗立教開宗1200年を記念して奉納される《ネクストマンダラ─大調和》は、小松美羽が描く現代の曼荼羅で、4メートル四方の二幅一対の巨大な曼荼羅。2023年に東寺真言宗総本山の教王護国寺に奉納され、奉納後は非公開になる為、本書でしか見ることができない貴重な作品といえる。
小松美羽はこれまで、いろいろなものを組み合わせ、まとめあげてデザインする力のことを「大和力」と呼び、創作上のモチーフとしてきた。2021年に高野山で《NEXT MANDALA―魂の故郷》を制作してからは、今の時代に求められているのは大いなる調和の力なのだということを学び、「大加速」(グレートアクセラレーション)から「大調和」(グレートハーモニゼーション)へ、これがいまの小松美羽が絵を描くという役割の意味であり、制作の信条となっている。
異彩を放ち、エネルギー溢れる小松美羽の作品は、私たちの魂を揺り動かし、閉塞した現代社会を生き抜く力を与えてくれる。内から沸き立つような力を得られる見応え十分の作品集。
著/小松美羽
サイズ
A4変型 並製本 232頁(作品点数100点)